インビザライン治療で歯を削る理由とは?メリット・デメリットを解説

こんにちは。三重県津市にある川村歯科クリニックです。

歯列矯正を考えている方のなかには「インビザライン治療では歯を削る」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。また、その話を聞いたときに「どのくらい削るのか」「痛いのか」「なぜ削るのか」など、不安になった方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、インビザライン治療で「歯を削ること」に着目して解説します。疑問や不安を解決してから治療にのぞみましょう。

インビザライン治療で歯を削ることはあるのか

クエスチョンマーク

インビザライン治療中に歯を削ることはよくあります。インビザライン治療で歯を削ることを「ディスキング」や「IPR (Interproximal Enamel Reduction) 」とよびます。

インビザライン治療での非抜歯矯正におけるディスキングの有効性

歯列矯正において非抜歯の方法として、歯を後ろ(奥歯側)に送る遠心移動できる「臼歯遠心移動」や顎を広げる「拡大装置」という選択肢があります。

臼歯遠心移動は、後方に移動できる距離は片側2.5mm程度といわれています。つまり、両顎では最大5mm程度うしろに移動できる計算です。また、拡大装置は主に小児歯科矯正に用いられる方法であり、成人では25歳までに行うことで効果が期待できます。

どちらの方法もすぐに効果が期待できるわけではありません。そのため、歯を直接削る方法である「ディスキング」のほうが有効性が高いとされているのです。

歯を削る方法は?

歯を削る治療をしている

ディスキングを行うときは、通常やすりのような器具を使用します。大きく削る必要がある場合・やすりで削ることが難しい場合は、切削器具(歯科治療でよく使われるドリルのような器具)を使用することもあります。

このディスキングについては、インビザライン治療で歯列矯正を行う患者さまのほとんどが経験するといわれていますが、いわゆる「すきっ歯」と呼ばれる空隙歯列の方は、歯が動くスペースが十分確保されているため、行わないことも多いです。

インビザライン治療で歯を削る理由

インビザラインでマウスピースをはめようとしている女性

歯列矯正をするとき、健康な歯を削ることに対して不安を感じる方もいらっしゃると思います。どうして歯を削る必要があるのか、しっかり理解して心の準備をしておくことが大切です。

インビザライン治療で歯を削る理由は、以下のとおりです。

歯が動くためのスペースをつくるため

そもそも、インビザライン治療は専用のマウスピースで徐々に歯を動かしていく治療です。

しかし、もとの歯並びによっては、インビザラインを装着しても歯が動くすき間がない方もいらっしゃいます。そのような場合、物理的に歯が動くだけのスペースを確保する必要が生じます。特に、歯と歯が上下左右に重なっている方などは、ディスキングが非常に有効です。

歯をしっかり固定させるため

歯を削ることで、隣接し合う歯と歯の密着度があがり、歯のすき間が埋まります。密着度があがることで歯の動揺が少なくなり、位置が固定される効果があります。

ブラックトライアングルを解消するため

ブラックトライアングルとは、歯と歯・歯と歯肉の間に見られる「黒い三角形のすき間」のことです。ブラックトライアングルは硬い歯ブラシを使用したり加齢や歯肉炎で歯肉が下がったりすることでできることが一般的ですが、歯列矯正でもできることがあります。例えば、重なっていた歯やねじれていた歯がきれいに並んでいく過程で、歯間の歯肉がのびて歯肉の位置が下がることで発生したり、歯列矯正後に歯磨きがしやすくなることで、腫れていた歯肉が引きしまることで発生することもあるでしょう。

歯の形が三角形に近いと、ブラックトライアングルは目立ちます。そこで、ディスキングを行い、角を取ることで歯の形を長方形に近づけます。長方形にすることで歯と歯の密着度があがり、ブラックトライアングルは消失していきます。

ブラックトライアングルは、見た目の問題で気になるという方がほとんどです。そのため、改善の必要性や見え方、感じ方には個人差があります。

インビザライン治療で歯を削るメリット・デメリット

メリットとデメリットのイメージ

どのような治療でもメリットとデメリットが存在します。後悔がないように、あらかじめメリットやデメリットはしっかり把握しておきましょう。

インビザライン治療で歯を削るメリット

インビザライン治療で歯を削るメリットは、以下のとおりです。

歯を動かすスペースをつくることができる

インビザライン治療は、マウスピースをご自身の歯に装着する矯正方法ですが、もともとの歯列によっては、歯が動くほどのスペースがないと矯正がスムーズに進まないことがあります。歯を削ることで、効果的に治療を進めることができるでしょう。

歯列矯正後の後戻りが予防できる

歯列矯正後に精神的ショックが大きいトラブルとして、歯がもとの位置に戻ろうとする「後戻り」があります。歯を削ることで歯と歯のの密着度が増し、互いに支え合うことで後戻りを防ぐ効果があります。

上下左右の歯の大きさやバランスが調整できる

先述したとおり、ディスキングでは微細に削るだけですが、少しバランスを整えるだけで見た目の印象はガラリと変わります。ディスキングには審美的なメリットもあるでしょう。

インビザライン治療で歯を削るデメリット

インビザライン治療で歯を削るデメリットは、以下のとおりです。

健康な歯を削らなければならない

歯を削ることは歯列矯正を行うことが目的であり、虫歯の治療とは目的が異なります。そのため、健康な歯を削る必要があります。健康な歯を削ることにどうしても抵抗感が払拭できない方もいらっしゃるようですが、エナメル質を削ったからといってただちに虫歯になることはありません。

しかし、エナメル質の厚みが減ってしまうことは理解しておかなければなりません。

大きなスペースを作ることは難しい

抜歯では、1本あたり7mmのスペースが確保されます。また、抜歯は左右対称に行うため14mmのスペースを確保することができます。

しかし、削れる範囲に限りがあるため、抜歯と比較するとスペースを確保することは難しいといえるでしょう。

疼痛や恐怖心を感じる方がいる

歯を削ることは、必要最低限の安全な処置です。

しかし、処置中に軽度の痛みや出血がともなうことがあります。また、歯を削る音が頭に響くことに不快を感じる方もいらっしゃるかもしれません。歯科治療が苦手な方にとっては苦痛に感じることもあるでしょう。

予定の治療期間より延びてしまうことがある

予定していた治療期間を過ぎても、削った歯のすき間が埋まらず、歯列矯正終了までの時間が思っているより長くなることがあります。場合によっては新しいマウスピースを増加しなくてはいけないこともあります。

歯を削ることによる痛みやしみは出ないのか?

歯がしみている様子の女性

ディスキングは、通常の場合、0.3mm以下の歯を削ります。しみるという自覚症状は「知覚過敏」とよばれ、エナメル質の下にある象牙質が露出することで起こります。エナメル質は2mmほどの厚みがあるため、歯を削った際にエナメル質の下まで到達することはありません。

ただし、端を削った際の熱や冷水で「しみる」「痛む」というトラブルが発生することもあります。その場合、我慢せずに歯科医師に相談しましょう。

削った歯の表面はざらざらしており、そのまま放置すると虫歯が発生しやすいです。虫歯は、エナメル質を溶かし知覚過敏の原因となるため、ディスキングのあとは歯の表面をなめらかにする処理を行います。また、フッ素クリームを予防として塗ると効果的です。

まとめ

ポイントをまとめる歯科医師

「歯を削る」と聞くと恐怖を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、インビザライン治療において歯を削ることは、理想の歯列に近づくための大切な処置のひとつです。抜歯せずにインビザライン治療を進めるためにも、重要といえるでしょう。

なかには、歯科治療恐怖症などで「削る」こと自体に強い不安を感じる方もいらっしゃると思います。その場合は、かかりつけの歯科医院やクリニックで治療方針をしっかりご相談いただき、ご自身にとって最善の治療方法を見つけましょう。

インビザライン治療を検討されている方は、三重県津市にある川村歯科クリニックにお気軽にご相談ください。

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