こんにちは。三重県津市にある川村歯科クリニックです。
何らかの理由で奥歯を1本だけ失ってしまった場合、治療方法の一つに、入れ歯があります。奥歯が1本抜けたままだとどのような支障が出るのか、1本だけでも部分入れ歯はできるのかなど、疑問を感じてはいる方もいるでしょう。
今回は、奥歯を失ったままにするリスク、奥歯1本だけの入れ歯は作製できるのかどうか、部分入れ歯のメリット・デメリットなどを解説します。奥歯の部分入れ歯を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
奥歯の役割
奥歯は、前歯で噛み切った食べ物を噛み砕いて、細かくすり潰す役割を果たしています。私たちは、食べ物を細かくすり潰し「食塊」とよばれる塊にして、飲み込みやすくします。奥歯は、食塊を形成するために必要不可欠な存在なのです。
奥歯を失うと、食べ物を噛み砕く力が40%低下するといわれています。噛む能力が低下すると、食べ物を飲み込みにくい、消化器官に負担がかかるなどの影響があり、噛み合わせの高さを決める基準にもなります。奥歯を失うと噛み合わせのバランスが崩れ、歯並びも乱れるリスクが高いです。
奥歯を抜けたままにするリスク
奥歯を1本失った状態で生活すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。「奥歯だから目立たないし治療しなくてもよい」と放置している方もいるでしょう。奥歯を抜けたままにするリスクは、以下の4つです。
- 周囲の歯が移動する
- 噛み合わせが悪くなる
- 消化器官に負担がかかり口臭の原因になる
- 発音や見た目に影響する
それぞれ詳しく解説します。
周囲の歯が移動する
歯は、上下左右の歯が並び噛み合うことでバランスを保っています。歯を失って抜けた部分にすき間が生じると、噛み合う歯が伸びる、隣接していた歯が左右に傾くなどのリスクがあるのです。
周囲の歯が移動すると、入れ歯やブリッジ、インプラントなどの失った歯を補う治療ができなくなる可能性もあります。
噛み合わせが悪くなる
上述したとおり、歯を失うと噛み合う歯や隣接の歯が伸びる・傾くなど、移動するリスクがあります。歯並びが変化すると噛み合わせが悪くなり、ものを噛みにくいなどの支障が出る可能性が高いです。
噛み合わせのバランスが崩れると顎関節にも負担がかかるため、顎関節症や頭痛・肩こりなど、全身の不調にもつながります。
消化器官に負担がかかり口臭の原因になる
奥歯は、食べ物を細かく噛み砕き、スムーズな嚥下を行うサポートをします。奥歯がないと、食べ物を細かくできず、不適切な大きさで嚥下することになるケースも少なくありません。消化器官に負担がかかり、体調不良につながることもあるでしょう。
うまく噛むことができず噛む回数が少なくなると、唾液の分泌量が減少します。唾液には自浄作用があるため、唾液の量が減少すると虫歯や歯周病にかかるリスクが高まるでしょう。
また、消化器官の不調や虫歯・歯周病は、口臭の原因になります。奥歯がないとどちらのリスクも高まるため、口臭が強くなる可能性が高いです。
発音や見た目に影響する
奥歯がなくなるとすき間が生じるため、発音の際にすき間から空気が漏れて言葉が不明瞭になる可能性があります。奥歯は、前歯のように目立つ部分ではないので、審美的な影響は少ないと考えている方もいるでしょう。
しかし、奥歯がない状態が続くと、歯茎が痩せて頬のラインが変化します。輪郭に左右差が生じる、頬がこけて見えるなど、見た目にも影響を与えるでしょう。
部分入れ歯は奥歯1本だけでも可能?
部分入れ歯は、奥歯を1本だけ失った方でも作製することが可能です。歯を補う方法として、入れ歯以外にブリッジやインプラントが挙げられます。
しかし、ブリッジやインプラントは適応条件が部分入れ歯より厳しいため、適応外となる症例もあります。部分入れ歯であれば、ブリッジ・インプラントが適応外となった方でも対応できる場合が多いです。治療の適応範囲が広いことが、部分入れ歯の大きな特徴といえるでしょう。
奥歯を部分入れ歯にするメリット
奥歯を部分入れ歯にするメリットは、以下の4つです。
- 健康保険が適用される
- 着脱できる
- 短期間で治療が完了する
- 外科手術が不要で適応範囲が広い
それぞれ詳しく解説します。
健康保険が適用される
部分入れ歯は健康保険の対象です。保険適用の入れ歯は審美性が劣りますが、保険適用のブリッジと比較すると安価に作ることができます。できるだけ少ない費用で歯を補いたいと考えている方に適しているでしょう。
着脱できる
部分入れ歯は、着脱できるためお手入れがしやすく、口内を清潔に保ちやすいメリットがあります。食べカスが詰まった際は、取り外してうがいを行えば、ある程度の汚れを取り除くことが可能です。
ブリッジやインプラントは着脱ができないため、歯とのすき間に食べカスが詰まりやすいです。そのため、歯間ブラシなどの補助清掃用具を用いて念入りに清掃する必要があります。
短期間で治療が完了する
保険適用の部分入れ歯は、2週間〜1か月ほどで完成します。ブリッジは1か月ほど、インプラントは最短で3〜6か月が治療期間の目安です。
早く歯を補いたい方や治療期間を短くしたい方にとって、短期間で治療が完了することは大きなメリットといえるでしょう。
外科手術が不要で適応範囲が広い
部分入れ歯は、外科手術をする必要がありません。インプラントは外科手術が必要なため、全身疾患の有無や骨の状態などの条件を満たさないと治療適応外となる場合があります。入れ歯であれば、術中・術後の細菌感染の心配や麻酔のリスクなどもなく、安心して治療を受けることができるでしょう。
また、部分入れ歯は治療の適応範囲が広く、歯を1本失った方はもちろん、歯をすべて失った方でも治療することができます。ブリッジは両隣の歯がしっかりしていることが条件となるため、補う歯の本数が多いと適応外になる可能性が高いです。
奥歯を部分入れ歯にするデメリット
奥歯の部分入れ歯を検討する際は、デメリットも理解しましょう。奥歯を部分入れ歯にするデメリットは、以下の3つです。
- 違和感が出やすい
- 着脱に手間がかかる
- 審美性や強度が劣る
それぞれ詳しく解説します。
違和感が出やすい
部分入れ歯は、歯茎を支えとして利用するため、ブリッジやインプラントと比較して痛みや違和感が出やすい治療法です。噛む力も弱くなるため、硬いものをうまく噛み砕けなくなるでしょう。
部分入れ歯に慣れることで少しずつうまく噛めるようになる可能性はありますが、天然歯と比較すると噛む力は半分以下になります。小さく切ってから食べるなどの工夫が必要になるでしょう。
着脱に手間がかかる
部分入れ歯は、着脱式なので自己管理が必要です。食後は外して、付着した汚れをブラシなどで落とす必要があるでしょう。就寝時は、歯茎の負担を軽減させるために外して保管しなくてはいけません。隣接する歯や歯茎もしっかりとブラッシングして、汚れを落とす必要があります。
着脱して手入れすることが面倒に感じる方には向かない治療法といえるでしょう。
審美性や強度が劣る
保険適用の入れ歯を選択した場合、審美性や強度が劣る点がデメリットです。保険の部分入れ歯は、歯にかけるバネの部分が金属なので目立ちます。
歯茎を覆う床(しょう)部分はプラスチックなので、強度を保つために厚みが必要です。違和感を軽減するために床部分を薄くすると、強度が足りずすぐに欠ける、割れるなどのリスクが高まるでしょう。
部分入れ歯の種類
部分入れ歯には、さまざまな種類があります。ご自身の口内の悩みや希望に合わせて、適切な部分入れ歯を選択しましょう。以下、部分入れ歯の種類をご紹介します。
レジン床義歯(保険適用)
レジン床義歯は、歯茎を覆う床部分がプラスチック、歯にかけるバネ部分が金属でできた入れ歯です。保険適用なので安価に作製することが可能で、破損した場合も修理が容易にできる点が特徴として挙げられるでしょう。
デメリットは、バネ部分が目立ち、審美性に欠けることです。強度を保つにはプラスチックに厚みが必要なため、違和感をおぼえる方も多く、発音に支障が出やすいこともデメリットです。
コンフォート義歯(自由診療)
コンフォート義歯は、レジン床義歯の歯茎に当たる部分をシリコーンでコーティングした入れ歯です。歯茎に当たる部分をやわらかいシリコーンに置き換えることで、噛んだときの刺激を吸収・分散します。そのため、痛みや違和感が出にくいメリットがあります。
しかし、痛みや違和感が出たときや破損したときに、調整・修理することが難しい点がデメリットです。シリコーンでコーティングしている分プラスチック部分が薄くなるので、強度が劣ることもデメリットでしょう。
ノンクラスプデンチャー(自由診療)
ノンクラスプデンチャーは、歯にかかるバネ部分に金属を使用せず、床部分と同じ素材を使用した入れ歯です。金属を使用しないため審美性に優れており、目立ちにくいメリットがあります。金属アレルギーのリスクもありません。弾性の高いプラスチックを使用しているので、レジン床義歯と比較して薄く作製することが可能です。
ただし、破損した際に修理ができない素材なので、破損した場合は新製する必要があります。素材の寿命も短いため、2〜3年で作り替えが必要になる可能性が高いでしょう。
金属床義歯(自由診療)
金属床義歯は、歯茎に当たる床部分を金属で作製した入れ歯です。床部分を金属で作製することで、強度を保ちながら薄く作製できます。金属床義歯は、違和感が少ないことがメリットです。また、金属は熱伝導性が高いため、食べ物の温度を感じやすく食事の楽しさを損なうリスクも軽減できます。
部分入れ歯で金属床を作製した場合、設計によっては金属部分が目立ってしまうことがデメリットです。
部分入れ歯の費用
部分入れ歯は、選択する種類によって費用が大きく変動します。部分入れ歯の費用相場は、以下の表のとおりです。
<部分入れ歯の費用相場>
部分入れ歯の種類 | 費用相場 |
---|---|
レジン症義歯(保険適用) | 3割負担の場合:約5,000〜10,000円 |
コンフォート義歯(自由診療) | 約100,000〜500,000円 |
ノンクラスプデンチャー(自由診療) | 約80,000〜300,000円 |
金属床義歯(自由診療) | 約300,000〜600,000円 |
保険適用の部分入れ歯の費用相場は、失った歯の本数や部位によって異なります。自由診療の入れ歯の場合は、歯科医院によって価格設定が異なるため費用相場に幅があります。
自身の部分入れ歯の作製費用を詳しく知りたい場合は、歯科医院を受診して相談するとよいでしょう。
まとめ
奥歯には、食べ物を細かく噛み砕き、すり潰す役割があります。奥歯を抜けたまま放置すると、隣接する歯が傾いたり噛み合う歯が伸びたりすることで歯並びが崩れる可能性があります。結果的に、噛み合わせの異常や全身の不調につながるでしょう。
奥歯を1本でも失った場合は、放置せずに補う必要があります。部分入れ歯は、歯を補う治療法の一つです。部分入れ歯にはさまざまな種類があるので「費用を抑えたい」「しっかり噛める入れ歯がいい」など、ご自身の希望に合った入れ歯を選択することが可能です。どの部分入れ歯が合っているのか気になる方は、歯科医院を受診してカウンセリングを受け、適切な治療法を提案してもらいましょう。
奥歯の部分入れ歯を検討されている方は、三重県津市にある川村歯科クリニックにお気軽にご相談ください。